原文:
http://darwinawards.com/darwin/darwin1999-18.html
(1999年7月6日 フロリダ州)
火曜日の朝オルランドの水族館で、裸の男がシャチにまたがって死んでいるのが見つかった。男は溺死したか、低体温症で死亡したらしい。「あまり大きな外傷はなかった。シャチに咬まれていたわけでもなかったし、ばらばらにされていたわけでもなかった。」と保安官は語った。死体には擦り傷がついており、犠牲者が水槽の底に引きずりこまれたことが示唆された。
シャチと泳いだ男はダーウィン賞に値するだろうか。彼の奇妙な生活史が、判断の助けになるだろう。
死んだ男はダニエルであると同定された。彼は浮浪者で大麻を常用していた。ダニエルは電車のプリペイドカードを所持しており、警察はカードに書かれた住所から、マイアミのハリ・クリシュナ寺院にたどり着いた。
そこの聖職者のポール・ソウは、ダニエルがそこで他の六人の信者と共に過ごしていたときのことを話した。彼は自然を愛好しており、日記を書いたり野鳥に餌をやったりして過ごしていた。ダニエルはこの宗教の戒律である午前4時起床、食事制限、酒、ドラッグ、セックス、ギャンブルの禁止になじめなかったようだ。彼は仕事をさぼって、礼拝堂でヘビメタを聴くことを好んだ。
ハリ・クリシュナには沈黙の戒律がないにも関わらず、ダニエルはいきなり沈黙の誓いを始めると宣言し、周囲を混乱させた。彼は春に突然、「自由になって旅がしたい」と言って教団を去った。
ダニエルはその後、サウスカロライナ州、ワシントン州、テキサス州、フロリダ州でけちな犯罪を重ねた。死亡した日、彼はちょうど拘置所への三日間の収容から釈放されたところだった。罪状はセブンイレブンでキャンディーバーを盗んだというものだった。裁判所では沈黙の誓いを復活させたようだ。容疑を否認するのに紙とペンを使っていたことから、「容疑者は口がきけないようだ」と裁判官は記述している。
その三日後、この向こう見ずな大麻常習者は水族館に入場し、午後10時の閉館までシャチのプールの周りをうろついていた。彼は24時間体制の警備をすり抜けたようだ。
服を脱いで水泳パンツに履き替えると、彼は3フィートのプレキシグラスの防壁をはがして、低い石の壁を乗り越え、ティリカムというシャチがいる80×100フィートの凍るようなプールの中に入った。従業員は翌朝の7時35分に、ダニエルの裸体を発見した。水着の残骸がプールのいたるところで見つかった。医学調査官によると、ティリカムは剃刀のように鋭い歯で水着を脱がそうとしたようだ。
この自然愛好家がバスほどの大きさがある肉食動物とコミュニケーションをとろうとしたとき、どのような精神状態にあったかは分かっていない。脱ぎ捨てた服の中からは大麻タバコが見つかったが、水族館の入場券は見つからなかった。匿名の水族館職員によると、驚くべきことに、ダニエルが海生哺乳類とコミュニケーションをとろうとしたのはこれが初めてではないらしい。
二年前、彼はマナティーの水槽に飛び込んだことがあったのだ。もっともこのときは、水は温かかったし水槽の住人も攻撃的ではなかった。
・シャチのティリカムについて
このシャチは8歳で、全長22フィート、体重11000ポンドという飼育下のシャチとしてはは最大級の大きさを誇る。1991年に水族館によって購入されたときは、150万ドルの価値があると見積もられた。彼は人間と触れ合う訓練を受けていなかったので、危険だと認識されていた。生物学者は彼はダニエルが人間という脆弱な生き物であることを理解せず、ダニエルをおもちゃとして扱ったと推測している。
ティリカムが死を引き起こしたのはこれが初めてではない。彼と他の二匹のシャチは、カナダのビクトリア州で起きた訓練士の溺死に関与しているのだ。ケティ・バーンはシャチのプールに落下した後、そのまま引き込まれて溺死したのだ。
ティリカムは創造力に富む海生の肉食獣であり、水族館内で繁殖して4匹の仔の父親となっている。
ティリカムとダニエルを比べたとき、進化論的に見てどちらが優れているかは明らかだ。