原文:
http://darwinawards.com/darwin/darwin1999-30.html
(スコットランド)
ある23歳の画家は額でグラスを割ったり鍵を飲み込んだりといった向こう見ずな行動から、友人に「命知らず」と呼ばれていた。警察では彼について
「体のほうは健康だが、頭のほうはそうじゃない」と評していた。彼は少々馬鹿だと思われており、自分の評判を高めるためのむなしい努力としてそういう愚行をやっていたようだ。
彼はしばしば、ビリヤードのプールボールを飲み込んで吐き出すという芸をやっていた。この芸のポイントは、飲みこんだ球を咽頭か喉に隠しておくことだった。彼は気づいていなかったが、これは球が特定のサイズであるときにのみ可能なことだった。
ある日、彼はドライビールを大量に飲んで酔っ払っていた。法的に店を閉めなければならない時刻になっても、パブの店主は彼が友人と飲み続けるのを黙認していた(訳注:スコットランドでは酒場の深夜営業が禁止されている)。夜が深くなると、彼はビリヤードのキューボールを飲み込んで見せた。それまでに何度もやっている芸だったので、友人たちはまったく心配していなかった。しかしこのときに限り、彼は球を喉に詰まらせてしまった。友人たちも気づいて助けようとしたが、彼はパブを飛び出して路上に倒れ、蒼白な顔になった。救急隊が到着したが、彼を助けることはできなかった。
何がまずかったのだろう。
事故が起きたとき、「命知らず」はキューボールを飲み込んだ。彼はキューボールがちょうど咽頭に詰まる大きさであることに気づいていなかった。キューボールはプールボールより小さい。だから台のポケットに入れても出てくるのだ。不幸なダーウィン賞受賞者はこのことを明白な形で実証したといえる。キューボールの直径は4.75cm、対してプールボールの直径が5.03cm。直径の違いがこの程度なので、二種類の球は見た目にはほとんど同じである。「命知らず」にとって不運だったのは、直径のちょっとした違いは体積に大きな違いをもたらすことだった。キューボールはプールボールより10.52立方センチも小さいのだ。
自分が馬鹿でないことを示すための(客観的にはその評価をますます決定づける)努力の中で、「命知らず」は常識と簡単な算数について失念していたようだ。そのために彼は喉にキューボールを詰まらせることになったのだ。
この事故についての調査記事には、犠牲者の喉の解剖写真が載っている。写真では気道は完全にふさがれており、舌は見苦しく突き出している。