おそるおそる入った部屋は、驚くほど快適で開放感があった。コーヒーの香りが漂い、窓には花が生けられていた。占い師もごく普通の女性のように見えた。ジプシーのトレーラーハウスのような空間と、ローブを身にまとった魔女のような女性を想像していた彼女は少し拍子抜けした。

　椅子に座ると、占い師は彼女の手相を読み始めた。占い師は少し眉間にしわを寄せながら、手相を読むのに集中していた。それから占い師は無料だから、タロット占いをしていいかと聞いた。これは親友の話とは違っていた。彼女はしばらくためらったが、肩をすくめていいと言った。

　占い師はカードを注意深く見た後、もう一度手相を見た。最後に占い師は何となく神経質そうな表情で彼女の目を見つめながら、不安を和らげるようにこう言った。「あなたの未来はとても明快です。私は最近結果の伝え方を変えることにしました。占いの結果は封筒に入れてお渡しし、家で読んでいただくことにしたのです。これは私がお客様の表情を読んで占っているのではなく、確かに超能力によって手相とカードから未来を予知していることを示すためです」。

　彼女はこの言葉に感銘を受けた。確かに理にかなっている。占い師は何の質問もせず、手相とカードを読んだだけだった。だから占いの結果が当たっていれば、それは占い師の超能力によるものということになる。占い師は奥の部屋に引っ込むと、何かをペンで書き始めた。その後占い師は彼女に封筒を渡した。

　「ありがとうございました」彼女は占い師に言って手を振った。それから彼女は結果を早く読もうと思って、車に向かって急いだ。自分にはどんな未来が待っているのだろう？　裕福な夫だろうか？　新しい仕事だろうか？　海外の興味深い場所への訪問だろうか？

　彼女の車が高速道路に入ったとき、そばを走っていたトラックが不注意な車を避けようとしていきなりハンドルを切った。トラックはそのまま彼女の車に衝突し、二つの車は中央分離帯に叩きつけられた。

　救急隊が彼女の遺体を運び出したとき、隣に封筒があることに気づいた。それは悲しみにくれる彼女の両親に手渡された。封筒を開けると、そこにはたった一行の文があった。「あなたに未来はありません」。
（終わり）

管理人
　占いっていうのは、結局どういうものなんでしょうかね。自然災害とかならともかく、人間の行動っていうのは、占いの結果を聞くことそれ自体によって変化するわけです。占い師は「この占いを聞いた結果、この人の行動はこう変化し、結果的に占いどおりの結果になるだろう」という感じで予想するんでしょうか？　それとも天命みたいなものを読むんでしょうか？　都市伝説に限らず、占い系の話ではそこのところが釈然としなかったりします。