イエスが解決できたはずの数々の問題について考えてみよう。最低でも、イエスは聖書に性差別、人種差別、奴隷制を終わらせるための節を入れることが出来たはずだ。

　もっとも単純な例として、奴隷制が生み出した全ての苦しみについて考えて欲しい。イエスと聖書がそれを完全に支持していたために、数え切れない数の人々が奴隷制による自由の剥奪と残虐行為に苦しめられた。もしイエスが、「奴隷制は許されない、全ての奴隷を解放せよ」と一言言っていれば、これらの苦しみ全てを防ぐことが出来たはずなのだ。しかしイエスはこういうことを何もやっていない。代わりにイエスは奴隷制を是認したのだ。

　同じように、イエスは使徒のうち６人は女性を選び、男女の平等について語ることも出来たはずだ。そうすれば、イエスは性差別に巨大な打撃を与えることが出来たはずだ。イエスはそうしなかったので、今日の我々の社会にはイエスの性差別の痕跡がいまだに見られる。

　もう少し大きいレベルでは、イエスが神なら彼は本当の奇跡を数多く見せることが出来たはずだ。例えば彼は天然痘や、現代の科学者が立ち向かっている他の病気を消滅させることが出来たはずだ。イスラエル人に産業社会を築くための知識を伝え、彼らをその時代の原始的な生活水準から脱却させることも出来ただろう。イエスならイスラエル人に、冶金学、化学、生物学、物理学、工学、数学、薬学、などなどを教育できたはずなのだ。彼はまた、汚染や居住空間の破壊を防ぐため、技術は責任を持って使用するべきであることも教えることができただろう。

　それからイエスは核兵器の拡散を防げと言うこともできただろう。

　イエスは全てを売り払い貧者に与えよと言っているので、少なくとも貧困問題は解決しようとしていたのではないかという意見もあるだろう。しかし、この発言でイエスは人間の本性に対する完全な無知を露呈したと言える。自分の持ち物を全て売り払って貧しい人にその金を与えたという人を、あなたは一人でも知っているだろうか。結果としてこの地球に住む人の約半分は、一日３ドル以下という絶望的な貧困の中で暮らしている。上のような発言をする代わりに、イエスは富を適切に分配しろと人類に伝えるべきだった。そうすれば現在見られる世界的な貧困という大問題は、とっくの昔に解決していたはずなのだ。またイエスは、君主制、独裁制、軍政を禁止するような統治の論理を規定することもできただろう。

　もっとも重要なことだが、イエスは自分のメッセージをはっきりさせ、自分が神であることを明確な形で証明することができたはずだ。そうすれば地球上の人間全ては彼に帰依し、今日のように多数の互いに相容れない宗教に分裂することはなかったはずだ。そうすればイエスは、十字軍や9/11をはじめとする惨事を防ぐことが出来ただろう。

　イエスは、もし神であれば非常に多くのことが出来たはずだ。彼はその言葉と行動によって、膨大な人間の苦しみを防ぐことができただろう。理性ある人間がこの問題を見れば、イエスが普通の人間であることは痛ましいほどに明らかだ。イエスが普通の人間であるという事実は新約聖書を無意味なものとし、聖書の神が完全に空想であることを私たちに示している。